フランスでBPソムリエの試験に合格
現地のワイン生産者から学び、自ら体験して得た情報とまだ見ぬワインを日本のお客様に伝えていきたい。
塩澤 悠 様
高校卒業後、スイスのホテル学校でサービスやマネージメント、ビジネスを学び、その後フランスへワイン留学。ボルドーのワインスクールCAFA Formationsを経て、ボーヌ農業促進・職業訓練センター(CFPPA)で研鑽を積む。Conseiller en Sommellerie取得、国家資格BP Sommelierに合格。
留学までのステップ [学生⇒留学]
学生時代
高校卒業後、スイスのホテル学校でサービスやマネージメント、ビジネスを体系的に学ぶ
フランス ワイン留学 1年目
CAFAワインスクールのソムリエ養成コースで学ぶ
フランス ワイン留学 2年目
CFPPAのBPソムリエコースで学び国家資格BP Sommelierに合格
CAFAワインスクール時代
ソムリエ養成コース(9月~6月)/留学1年目
― ワイン留学はボルドーからスタートしましたね。
フランスでワインと言えばブルゴーニュもしくはボルドーかと悩みましたが、CAFA Formationsは私立の職業訓練校で学生へのケアも手厚いと聞き、ボルドーに決めました。
― 学校での講義はいかがでしたか?
コースは10ヶ月間で、内容は「講義」と「企業研修」です。月に約2週間の授業があり、2週間の授業とは少なく感じられますが、授業内容が濃い上に覚えることも非常に多く、また休日は専ら復習と個人でのシャトー見学、研修のための企業探し、履歴書作成で常に多忙でした。テイスティングしたワインは年間500種類を超えました。
― 講義に必要なフランス語のレベルは?
スイスのホテル学校では英語で受講しており、外国語としてのフランス語のレッスンもありました。CAFAではクラスの外国人の割合は高いですが、本来フランス人向けのコースなのでフランス語のレベルは高かったです。常に集中してメモを取りながら聞く必要がありました。
― クラスメイトにはどのような方がいましたか?
すでにソムリエとして経験を積まれた方から、ワインに興味はあるけれども何から始めたらいいか分からないという方もいました。年齢層は最年少が18歳、上は40歳を過ぎてから学び直したいという方もいました。クラスの平均年齢は30代半ばの印象でした。
― 企業研修には「収穫醸造研修」と「業務研修」がありますが、どのようなことをしましたか?
収穫醸造研修は収穫時期に約10日間をワイナリーで、業務研修は11月頃から約7週間で、内容はレストラン、ワイナリー、酒類販売店、ネゴシアンなどでの実務でした。収穫醸造研修は、学校からボルドーワイン格付け2級のシャトー・レオヴィル・ポアフェレ(サン=ジュリアンAOC)を紹介してもらいました。実際にワイン造りに参加でき、またワイン造りに情熱を燃やしている人々に出会うことのできる、本場ならではの貴重な体験でした。
― 業務研修はワイン界の重鎮、ベルナール・マグレ氏が所有するLa Grande Maison de Bernard Magrezでの研修だったそうですね。
フランス語の履歴書を作り、目星を付けていたレストランを一軒一軒回り、この素晴らしいレストランでアシスタントソムリエとして働く機会をいただきました。すばらしい出会いにも恵まれ、今でもこの職場で出会った方達とは交流があります。
― 学校では具体的にどのようなサポートがありましたか?
担当の先生がいて、講義と研修の両方に関してサポートとアドバイスをしてもらえたので心強かったです。また卒論、ワインメニュー作り、イベント業をサポートしてもらうために先生がチューターとなってくれるのも本当に助かりました。
― コース修了時の6月にはConseiller en Sommellerieに見事合格されましたが、どのように勉強されたのですか?
日々ワインを飲みながら味と表現を覚え、どのように相手に伝えたら感動してもらえるかを常に考えて勉強しました。また、フランスに限らず世界のワインも網羅しているので、クラスメイトと問題を出し合いながら学びました。
CAFA Formationsのクラスメイトと
体力勝負のブドウ収穫研修
ボルドー、ガロンヌ川のほとりで
ボーヌ農業促進・職業訓練センター(CFPPA)時代
BPソムリエコース(9月~6月)/留学2年目
― BP Sommelierコースは授業と実地研修で構成されていますが、まず授業内容について教えてください。
授業では理論を学びますが、ブドウ栽培の土壌から地理、農業、経営、歴史まで分野は多岐にわたるため、これらの内容を理解するだけのフランス語力が必要になります。CAFA Formationsでワイン全般の基礎を学んだ後にCFPPAに進んだのは、良い選択だったと思っています。
― クラスメイトにはどのような方がいらっしゃいましたか?
レストランのオーナーもいたり、10年以上もウェイターとして経験を積まれた方もいる一方、全くワインとは関係のない職業からキャリアチェンジのため学び始める方もいました。
― 実地研修はどのようなことをするのですか?
フランス人の知り合いの方の実家で、ブドウの収穫から醸造まで経験させてもらいました。家族経営のドメーヌで細かい作業もすることができ、教科書だけでは分からないことも実際に作業をすることで理解を深めることが出来ました。
― ボーヌでは多くのすばらしい出会いがあり、今後の目標も見つけられたそうですね。
ボーヌではワインに携わる多くの日本人が活躍していて、すばらしい先輩方との出会いがありました。また、ワインの造り手の方々と交流する中で「醸造家はブドウからワインを造り出し、ゼロから1を生み出す仕事をしている。ではソムリエのミッションとは何か」という課題に向き合うことになりました。そこで、実際に現地の造り手から学び、自ら体験して得た情報を商品に付加してお客様に伝え、ワインを販売していきたいと考えるようになったのです。
― そして、BPソムリエの試験に見事合格されましたね!具体的にはどのような試験なのですか?
読解、記述のほか、サービスの試験がありました。サービスの試験では、たとえば攻撃的な態度のお客様へのサービスという設定で、ソムリエとしてどのような応対をするかチェックされます。試験に備えて、学校で模擬練習があったのも大変役立ちました。また、ワインに対する愛や研究心があるかどうかも見られます。
― 現在はイタリアにご留学中ですね。※
イタリアワインを深く学びたく、イタリアへ移り試飲会に参加したり、ワイナリーを訪れたりしています。こちらにいる間にイタリアワインの資格を取得したいと日々勉強していますが、言葉が壁となり、またイタリアワインは土着品種が非常に多いので、イタリアだけなのに覚える量は半端ではないです。
※編集者注)2019年1月実施のインタビューに基づく情報です。
― 以前からSNSやYouTubeを使った情報発信にも取り組まれていますが、今後の展望についてお聞かせください。
帰国後は、父が経営する酒屋のある長野県飯田市を拠点に活動していく予定です。今後の課題はワインがあまり飲まれない市場でどのようにワインを浸透させていくかです。ワインスクールなどを開き、自らワインに対する理解をもう一度深めながら、ワインの正しい知識や楽しみ方、造り手の思いを伝えることが今の目標です。
― 将来フランスにワイン留学する方へメッセージをお願いします。
留学は現地の生のワイン情報を仕入れる貴重な機会です。学校の勉強だけでなく、ワイン生産者との交流や研修など、さまざまな活動を貪欲にされることをおすすめします。