留学体験談

考え方で、音楽に対する態度も変わります。

西本 佳奈美 様 Kanami NISHIMOTO

桐朋女子高等音楽科(男女共学)卒業後、渡仏。 パリ地方音楽院にてイヴ・アンリ(Yves HENRY)先生に3年間師事。 2016年よりリヨン国立高等音楽院ローラン・カバッソ(Laurent CABASSO)先生のクラスで第1課程修了。 現在、パリ国立高等音楽院ピアノ科第2課程にてマリー=ジョゼフ・ジュード(Marie-Josèphe JUDE)先生クラス、リヨン国立高等音楽院室内楽科第2課程 ダナ・シオッカーリー(Dana Ciocarlie)先生クラスに在籍中。

毎年新しい環境でフレッシュな気持ちです

 フランスに来てから5年が経ち、6年目になりました。とはいえ、最初の3年はパリでパリ地方音楽院、次の2年はリヨンに移ってリヨン国立高等音楽院(学士課程)、そして今年からパリに戻ってパリ国立高等音楽院(修士課程)で学んでいるので、毎回新しい環境で、フレッシュな気持ちでいます。また、今年からパリ国立高等音楽院のピアノ科と並行して、リヨン国立高等音楽院の室内楽科(同じく修士課程)での勉強も始めてみました。
二つの街を行き来しながら勉強するのは大変ですが、フランスにはTGV Maxという、26歳以下なら定額で乗り放題(時間を選べば)というシステムがあるので、それを上手く利用しています。

授業はハードだけどアットホームなリヨン国立

 昨年までいたリヨン国立高等音楽院のピアノ科学士課程では、沢山のことを学びました。リヨンのカリキュラムは少しハードですが、それだけ力もつきます。楽曲分析や民族音楽、伴奏法、エクリチュール、そして芸術と文明という授業などもありました。特に楽曲分析は、苦労しました。一人で授業一コマ分、プレゼンテーションというものがあり、フランス人は皆アナリーゼに強いので、その中で発表するのはとても緊張しました。
パリ国立高等音楽院と比べて感じるのは面倒見が良いな、ということです。パリでは150人ほどいるピアニストもリヨンでは30人ほどです。人数が少ない分、事務の人達も丁寧な印象があります。また、学生間の繋がりも濃くなります。

日本にはない珍しい”室内楽科”

 今年から入った室内楽科は日本にはない珍しい科で、個人ではなくグループで受験します。デュオ、トリオ、カルテットなどなんでも有りです。リヨン国立高等音楽院の室内楽科受験は、20分ほどの自由曲と面接です。面接では自分達のグループのアイデンティティをアピールしなければいけません。この課程は定期的なレッスンはなく非常に自由なプログラムで、自分達で国際コンクールや、ツアー、フェスティバルに参加したりするプロジェクトを進めることに重きが置かれています。
また老人ホームや刑務所、学校などで弾く活動もします。一年で弾く機会が増え、またフランスの社会に深く入り込める課程なのでとても興味深いです。

都市移動だけでなく、国もまたいでのレッスン!

 パリ国立高等音楽院では、リヨンのリソンス課程で受けた授業分で単位互換ができてしまったため、あまり授業はありません。Aspets Pratiques du Métierという講演が7回ほどと、教育法のセミナーが年に2回あります。マリー・ジョセフ・ジュード先生とプリスカ・ブノワ先生は二人とも非常に柔軟な先生で、どちらの先生も2週間に1度、2時間のレッスンを受けています。最初このペースを提案された時は戸惑いましたが、実際に受けてみると、レッスン一回一回がより濃くなり、学べることが多くなりました。たまに、ブノワ先生のジュネーブの方の家に行き、一日中レッスンをするということもしています。

固定概念にとらわれない人生観

 フランスに来てから固定概念にとらわれない人生観を持てるようになりました。こうしなきゃダメ、ああしなきゃダメなどといった自分が小さい頃から思い込んできたものを捨てるのは勇気がいりましたが、考え方を変えることができると、音楽に対する態度も変わってきます。すべては繋がっているのだなと感じました。このように自分の考え方を変えさせてくれた先生、友人達にとても感謝しています。