留学体験談

人生を通して音楽と向き合っていくためのレッスン

植野 悠希子 様 Yukiko UENO

ルイサダ先生との出会い

 私とルイサダ先生との出会いは、私が中学生の時までさかのぼります。一観客として先生の演奏を聴き、先生のピアノの音に魅せられ、この方のもとで勉強できたらどんなに幸せな事だろう…!とその当時は憧れの気持ちでした。その気持ちを高校卒業まで持ち続け、その気持ちだけを頼りにフランスへ飛び出して、ルイサダ先生門下に入れていただきあっという間に五年もの月日が経ちました。

 それだけの時間をフランスで過ごしても、フランス語はとても難しいし、ピアノも音楽の勉強もまだまだと思わされる日々です。それでも、この貴重な日々を振り返ると、ルイサダ先生から、そして日々の生活の中から得られたものは数え切れません。

 ルイサダ先生の門下生となりこの五年、先生から常に“ピアニストになるという事”について学ばせていただいていると感じています。目の前のコンクール、試験のために曲を仕上げるのではなく、人生を通して音楽と向き合っていくためのレッスンです。指遣いから一音一音の出し方、体の使い方、ポジション、一つ一つのフレーズからイメージできる様々な描写など、ピアノに向き合えば向き合うほど大きな壁にぶち当たるような感じがし、迷走することもしばしばです。

 先生は、音楽を表現するには、練習ばかりすればいいわけではない、自分の心を通して思いや様々なものを観客に届けられなければと月に数回映画会をご自宅で開いてくださいます。
先生お手製のご馳走をいただき、先生お薦めの(先生は数百本の映画コレクションをお持ちとのこと!)映画を鑑賞します。先生は、素晴らしい映画、芸術に触れ色々な思いを感じることはとても大切で、様々な方向から映画を通して音楽につながるものを教えてくださいます。先生のお話を伺いながら、音楽と共に生きていくことは覚悟のいることだと思い知り、私も人生を通して先生から学んだことを自分の音楽に込めて届けられる人になろうと思いました。その道はとても遠いかもしれませんが、最近特に強く思うようになりました。

 わたしはこの五年間先生に弟子入りしたような気持ちでひたすら先生のもとで修行を積み、とても充実した日々を送っていますが、同時に色々な留学生に出会い、留学には人それぞれ、本当に様々な形があるとも思っています。どんなことが目的でも、自分はこれを極めたい!これが好き!というなにか強い気持ちを持って来られたらきっときっと、素晴らしい充実した留学生が送れるのではない方と思います。