パリで生活した3年間は私の宝物になりました
昨年秋に3年間のパリ留学を終えて帰国しました。渡仏当初は語学面や、初めての一人暮し、さらに同時テロの後だった事もあり不安が沢山ありましたが、日仏文化協会のサポートもあり、なんとかパリでの生活を始められたのを記憶しています。
パリでは、音楽が日常や芸術と境界なく存在する。
留学先は、高校の時から国際アカデミーでレッスンを受けていた憧れのジャン=イヴ・フルモー(JEAN-YVES FOURMEAU)先生で、大学に在学中には現地での聴講をしていたので、受験に合格した時は、喜びでいっぱいでした。
パリには長い歴史の中で、沢山の芸術が凝縮されていました。しかも、それらは、現在も身近な生活の一部として生きていました。パリ最古の一つと言われるサン=ジェルマン=デ=プレ教会(L’église Saint-Germain-des-Prés)の鐘の音が毎日聞こえ、ルーブル美術館にも歩いて行ける環境の中、駅や路地でも、素晴らしい演奏を聞く事ができます。自分が暮らしたアパルトマンも築500年という長い歴史の中にありました。
音楽院では、高いレベルで、音楽の多くを学び、自分の中で音楽が形作られて行く事を実感できる程、充実しています。しかし、先生の音楽観に触れ、指導を受けながらパリで日々生活していく内に、音楽がその他の日常や芸術と境界なく存在する事に気付かされました。そして、ここでしか学べない事をもっと学びたいと思うようになり、2年の課程を終えた後に、再度受験して最高課程に進む事にしました。そして3年目はより高度で、奥の深い音楽芸術を学ぶ機会を得ました。
留学中には、フランス各地で行われるスタージュと呼ばれる講習会に積極的に参加し、多くの演奏家や世界各国の参加者ともレッスンや演奏会をする事ができました。音楽の多様性、ワールドワイドな人との繋がり、広い世界観を持つ事が出来たと思います。また、これらの活動は、音楽に限らず、沢山の人に触れ合い、助けてもらい、その瞬間にしか無い多くの出会いと経験をする事が出来ました。
留学という貴重な時間、自分なりのチャレンジもしました。留学が既に自分にとってのチャレンジでしたが、音楽院でのディプロマの取得、卒試の一等賞、加えてパリで行われるコンクールへの参加。国内で経験してきたコンクール、本場フランスで、どんな評価が得られるのか? 最初は挫折もありましたが、ソリスト1位を得る事もできました。これらチャレンジをした事で、より密度の高い最高の時間を造り出す事が出来ました。
肌で感じてきた音楽をこれからも磨いていきたい
フランスに暮らしてみなければわからなかった沢山の事が、音楽観を理解するために重要だったと思います。様々な文化、生活の中から音楽が生まれている事を実際に肌で感じられました。留学前には予想できなかった素敵な音楽観を得られたと思っています。帰国してまだ半年ですが、6月には、2回目になるソロリサイタルをする機会も頂き、今、その準備に取り組んでいます。
パリで生活した3年間は私の宝物になりました。肌で感じてきた音楽をこれからも磨いていきたいと思います。