「なぜ?」から会話のきっかけが生まれる醍醐味
3か月の短期留学で刺繍アトリエに通う。
いつか私も…が現実に!
「大きな枠に向かい刺繍をしている映画のワンシーン」が私とリュネビル刺繍の出会いでした。「いつか私もリュネビル刺繍を習う」夢が現実のものになりました。
特定のカリキュラムを持たず、学びたいことを先生がサポートしてくれる授業
柔軟な対応をしてくれる学校で好きなことを学ぶ自由な毎日
刺繍学校はパリ郊外にあるアトリエ(※)。ここは特定のカリキュラムを持たず、学びたいことを先生がサポートしてくれる授業の進め方です。基礎技術を学んでから一枚絵を製作します。先生のデッサンの上に刺繍、終わればデッサンを描き加え、また刺繍…という課程で作品を仕上げていきます。はじめて一枚絵に挑戦した時、先生の手から心電図検査の波線が淀みなく紡ぎ出されているように描きこまれるデッサン風景に目が釘付けになりました!パズルを組み立てるような作業は興奮の連続で刺激的な毎日でした。後半は、色や素材の組み合わせなどを自由に選ばせて頂けたので、私のチョイスを見る先生の反応も楽しみでした。
ある日、先生がドレス用の立体のコサージュ製作ため、沢山の平たい花びらを作っていました。「平面のものがどうやって立体に出来上がるの?」と事細かに質問したところ、それを学べるクラスを特別に開設してくださり、そんな柔軟な対応もこの学校ならではです。
オンオフをきっちり使い分けることを知る
私生活では、留学当初刺繍の課題の復習に明け暮れた毎日を送っていましたが、徐々に金曜日は手芸屋巡りと宿題、週末は蚤の市やピクニック、少し足を伸ばしてベルギーなどへの小旅行をして過ごす余裕も出てきました。限られたフランス生活を大いに楽しむことを覚えた私は、思い切り刺繍に打ち込んだ授業後はお酒や食事を堪能する事も学びました。
最後には「充実した学びにおいしいお酒…なんて贅沢!」とすっかり帰りたくなくなりました。
想像し作り上げることの大切さ
留学を終えて振り返ると、見たことのない技術ばかりに目を奪われていた頃の自分は、「想像し作り上げること」の大切さを忘れていたのかもしれないと思うようになりました。「製作」とは真っ白なキャンバスにデッサン、色付けそして刺繍をすべてひとりでこなしていくわけですから、この学校でゼロから一つの作品が出来上がる過程を見ることができた事は、私にとって大きな収穫だったと思います。
次の目標はフランスと日本を行き来しながら仕事ができる環境を作ること
あと「なぜだろう?」と興味が湧いたら物怖じせず聞くことは留学において特に大切なことだと思います。滞在できる期間は限られていて、「なぜ?」と質問できる機会は今しかないからです。その「なぜ?」から、会話のきっかけが生まれるのが醍醐味なんだというのが分かりました。
帰国後から次の渡仏まで…
現在は男性向けのポケットチーフや小物を製作し、その隣に並ぶ女性のアクセサリーやコサージュも展開する予定です。まずは刺繍の技術を学ぶ留学でしたが、好奇心は尽きず、刺繍技術はもちろん素材や服飾史、またその背景など今でも知りたいことがたくさん。次の目標はフランスと日本を行き来しながら仕事ができる環境を作れたらと模索しながら日々励んでいます。