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第8期奨学生の留学体験レポート

 

林田様の留学レポート2 ~この留学を振り返って~

 

 気がつけば、フランスにきてから1年以上が経過し、留学生活も終わりに近づいてきた。決して楽な時間ではなかったし、1年前に考えていた通りの時間を過ごすことはできなかったけれど、この期間で得たものは少なくないし、次につなぐことができる大変有意義な時間になったというのが私の率直な感想である。

シャルトルにて


  具体的に、この留学中に何を得たか考えると、それは大きく分けて3つある。1つ目は、適応力だと言えると思う。
フランスに来た最初の頃は、全てのことが目新しくて、語学も必死だった。少し時間が経つと、わからないことが多い状況や、なかなか思うように語学力があがらないことに対してストレスがたまってきた。そんな状況の中で過ごした暑い夏には、パリ以外にもたくさんの場所へ行って気分転換を試みることで、ストレスとうまく付き合うようにした。学校が始まる頃には、日が短くなったのに加えて寒くなってきて、フランス語のみの生活に対する疲れもピークに達してきた。そんな冬を乗り越えると、段々暖かく明るい時間もぐんと増える春がやってきていた。生活環境においても、お店で会うフランス人の無愛想具合に戸惑ったり、あまりよくない部屋の設備に悩んだりした。しかし、時間が経つにつれて、フランス人の気性に慣れてきたのか、のんびり構えることもできるようになった。部屋も自分で見て選んだ部屋に移り、快適に過ごせるようになった。「日本ではこうなのに」や「ぜったいにこうでなくては」という思いは、時には適応の邪魔になる。強い意思は大切だけれど、時に応じて、状況に応じて、気持ちに応じて、行動することが、長く無理なく過ごすためには必要であることを学べた。これはすごく新しい発見だった。

オーベルシュルオワーズにて


  今後の自分にとって、とても重要だと思うことも得ることができた。それは、現実的な進路が見えてきたことである。インテリアデザイナーを目指して渡仏したけれど、留学初期の段階で様々な人に出会い、インテリアデザイナーというよりも自分のやりたいことは、建築士という職業の方がより近いということに気がついた。その結果、当初の長くフランスに滞在する予定は変更し、日本で再び勉強することにした。しかし、一度フランスで勉強し、フランスで働くフランス人や日本人の建築家と出会い知り合えたことは、今後の自分の勉強の仕方の参考に大いになるはずであるし、フランスで働いてみたいという新しい夢も与えてくれた。


  最後は、これは2つ目とも少し重なるけれど、フランス人に限らず、建築士に限らず、人との出会いがたくさんあったことである。日本にいるだけだったら、出会う機会のなかったであろう職種や年齢の人達。色々な国からきた語学学校の友達。育ってきた環境が異なると、発想も、表現されるものも大きく異なるということを見せてくれたフランス人のクラスメート達。全く知り合いのいなかったパリでの生活において、このようにたくさんの出会いを得られたこと自体が、自分にとっては大きなことで、彼らとの出会いがなければ、私のパリでの生活はあり得なかった。パリでの生活のとてもおもしろかったところは、友達の友達とも友達になれることである。道を歩いている途中にすれ違う人とだって、友達になれることである。警戒心も必要だけれど、自分さえオープンになって、下手なフランス語でも伝えようとすれば、人との出会いは無限にある街なのである。


  パリを離れることは、少しさびしい。だけれど、パリはいつでもいつまでもここにある。少しずつ変化はしているけれど、良くも悪くもパリらしいパリは、きっといつまでもパリにあると思う。だから、これから先まだまだこの街と出会う機会はある。これからの自分の行きていく道に、またパリが交差することがあるかもしれないから。この留学を振り返って思うことを一言で言うのなら、まさしく私はパリでしか体験できないことをした、これに尽きると思う。