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第21期奨学生の留学体験レポート

 

白井拓朗 様 エクスレポート6

 

4月中旬に語学学校の春学期が終了し、クラスメイトたちが徐々に帰国していますが、私は5月の第3週目から始まる同じ大学付属の語学学校のセッション(夏期講習)を受講するので、もうしばらくフランスに滞在します。
この奨学生レポートも5月で一区切りとなり、今回のレポートで最終レポートを提出する予定でしたが、これから留学を考えている方々に少しでもフランスの魅力、私が滞在しているエクス=アン=プロヴァンス周辺の情報を発信できればと思い、レポートを続投させていただくことになりました。多少、私の趣味や趣向が入ってしまい、オタクのような紹介になってしまうかと思いますが、ご了承ください。今回はエクスから日帰りで行けるオーバーニュとトゥーロンについて紹介したいと思います。

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外人部隊基地正面
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祭り会場
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ダンジュー大尉の義手
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ダンジュー大尉の肖像画
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軍楽隊によるパレード
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トゥーロン駅正面
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ファロン山からのトゥーロンの町
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ファロン山から

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海軍博物館
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空母シャルル・ド・ゴール

 

●オーバーニュのカマロン祭り

オーバーニュ(Aubagne)に行くにはエクスから直通のバスが出ていて、エクスのバスターミナルから72番のバスに乗ります。料金は6,30ユーロ(2016年現在)で、便は多いほうです。オーバーニュの町はエクスほど大きくなく、特に目立った観光地ではありません。日本で売られているフランスの旅行ガイドブックにも載っていない町です。私がこの町に行った理由は、ある祭りのことを本で知り、フランスに行ったらぜひ、行ってみたいと思ったからです。その祭りというのが「カマロン祭り(Fête de Camerone)」というものです。
ここ、オーバーニュにはフランス外人部隊(Légion étrangère)の司令部が置かれています。フランス外人部隊のことは知っている方もいるかと思いますが、創設は1830年でその名の通りフランス人以外で構成される軍隊です。そして、毎年4月30日は外人部隊にとって重要な日で、この日は基地内部が一般市民に開放され、誰でも入ることができます。
カマロン祭りの由来は今から150年ほど前のナポレオン三世によるメキシコ出兵(1861-67)の最中、1863年4月30日に輸送部隊を護衛していたフランス外人部隊60名がメキシコ軍2000名とカマロンの地で戦い、圧倒的に不利な状況でしたが、外人部隊は戦い抜いて、ほとんど全滅に近い損害を受けましたが、当初の目的であった輸送部隊の護衛に成功しました。以来、外人部隊は彼ら兵士たちの勇戦と自己犠牲に対して敬意を表し、4月30日をカマロンの日として制定しました。さらに、この日だけ、その外人部隊を率いて、戦死したダンジュー大尉が使用していた義手が公開されますので、これを見るために行ったと言えます。
基地に着くと、軍の施設なので荷物チェックとボディーチェックを受けました。すごい強面の兵士が私の対応をし、厳しく調べられました。一緒に行った日本人の女の子を対応した兵士はすごく優しくて、笑顔で対応していて、チェックも私より厳しくなく、すんなり通っていました。基地の中ではお土産屋さんや屋台がたくさん出ていました。お目当ての義手は基地内部にある博物館に展示されています。博物館では創設から現在に至る外人部隊の歴史を知ることができます。実は、第二次大戦中に外人部隊はインドシナ半島で日本軍と交戦していて、展示品の中には日本刀がありました。義手が展示されている部屋の入り口には柵があり、近くで見ることはできませんが、実物を見ることができてよかったです。
午後には軍楽隊による演奏も行われました。外人部隊ということもあり、様々な国籍の兵士たちに会いました。日本人に会えるかと思い、探してみて、声をかけた人は韓国人でした。彼に日本人はいるかと聞いてみたところ、日本人は在籍しているが、その日はいないということでちょっと残念でした。年に一回しかないお祭りに参加でき、日本ではそれほど身近ではない軍隊の基地に入ることができて楽しかったです。

 

●トゥーロン

続いて、トゥーロンについてですが、トゥーロンもエクスから直通のバスが出ていて、片道13ユーロぐらいで行けます。しかし、私が行った日は休日で、しかも日曜日だったのでバスは走っておらず、電車で行くことにしました。バスでマルセイユまで行き、マルセイユでTERに乗り、1時間ぐらいで着きます。料金は12ユーロなのでバスで行くのとそれほど変わりません。
トゥーロンはミリタリーファンならば軍港のイメージが有名です。現在、フランス地中海艦隊の司令部が置かれています。駅の正面には水兵の像があり、駅にいても潮の香りがしてきます。トゥーロンと言えば軍港ですが、その軍港を見渡すことができる場所があり、それがファロン(Faron)山です。標高は約500メートルで、山頂まではロープウェーがあるので登る必要はありません。ロープウェー乗り場までは駅から歩いて20分ほどです。短い間隔で運行していて往復チケットは7.50ユーロでした。10分ほどで山頂に行くことができます。山頂からの眺めは最高で、トゥーロンの町を一望できます。山頂には教会・動物園・博物館がある以外に、レストランもあったのには驚きました。車でも行くことができ、下から車がたくさん登ってきていました。博物館からの眺めが最高だとロープウェーの係の人が教えてくれましたが、残念ながら現在は閉館中だったので、代わりにお勧めのベストスポットを教えてくれました。そこからの眺めはさらに良く、軍港のミニチュアを見ているようでした。係の人が港に行けば軍港の周遊ツアーがあると教えてくれて、港に向かいました。
ツアーは15時からで、それまでだいぶ時間があったので海軍基地の傍にある海軍博物館を訪れました。トゥーロンはフランス最大の軍港であり、港町としての歴史もとても古いです。博物館ではトゥーロンの町の歴史と絡めながらフランス海軍のことや船舶の発展の歴史を知ることができます。料金は6ユーロでオーディオガイドも含まれていて、日本語があるかと思いましたが、残念ながら置いてなく、しかたがないのでフランス語で聞いていました。さすがにオーディオガイドの説明は半分も理解できず、解説文を見ていました。
トゥーロンを訪れた理由はこの町が、ナポレオンが初めて名を上げた戦いの舞台となったからです。トゥーロンはフランス革命中にイギリス軍に占領され、政府はその奪回のために軍隊を派遣しますが、町を奪回することができませんでした。そんな時に派遣されたのがナポレオンでした。ナポレオンが立てた計画によってフランスはトゥーロンを奪回することができました。トゥーロンはナポレオンにとってのデビュー戦であったと言えます。何かナポレオンに関わる記念碑でもあるのかと思い、博物館の学芸員の人に聞いてみましたが、市内にはそのようなものはなく、トゥーロンの町も第二次大戦の被害で町のほとんどが破壊されてしまい、再建された比較的新しい町である、ということでした。博物館では第一次大戦の企画展をやっています。というのも、一昨年の2014年で開戦100周年ということもあり、現在、第一次大戦をテーマにした企画展が開かれています。この展示の中に日本の紹介もありました。日本はヨーロッパでの第一次大戦とは縁がないと感じる人もいるかと思いますが、実は地中海まで軍艦を派遣しています。地中海のフランスやイギリスの輸送船を護衛するために派遣された日本の軍艦がトゥーロンに寄港しています。ここトゥーロンに限らず、フランスで日本のことを紹介する文章を読んでいるとフランスにいるということを実感します。
博物館を後にして、港に行くと周遊ツアーの船がたくさんあり、あまり人が乗ってない船に乗りました。料金は10ユーロで湾内を1時間ほど巡ります。あまり人が乗っていなければ自由に席を移動できると思ったのですが、出発1分前にどっと団体客が乗り込んできて、船はあっという間に満員になってしまいました。窓側に座っていたから良かったのですが、周囲はフランス人に包囲され、少し不安になりました。
船は軍の立ち入り禁止エリアぎりぎりを運航し、船長さんが湾内に停泊している船の説明してくれます。トゥーロンはフランス唯一の空母シャルル・ド・ゴールの寄港地で、去年1年間は中東方面に派遣されていました。現在はトゥーロンに戻ってきていて、訪れた日も停泊していて、その大きさには驚かされました。また、大きな旅客船も停泊していて、トゥーロンからナポレオンの故郷コルシカ島などにも行くこともできます。機会があればコルシカにも行ってみたいと思っています。
今回のレポートはオーバーニュとトゥーロンとミリタリー関連の説明でしたが、2つの町とも南仏ならではの景色や自然を感じることができます。最近は気候も暖かくなり、半袖半ズボンの人も見かけるようになり、夏が近づいてきています。まだ、南仏の夏を体験していないのでどれほどのものなのかこれから楽しみです。