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第21期奨学生の留学体験レポート

 

小谷純人様 カーンレポート3

 

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  語学留学の素晴らしい点は、様々な国の人と同じクラスで勉強できることです。初めに私の目を惹いたのは、アメリカ人のクラスメイト達。彼らは何かあるとすぐに、ハイタッチをするのです。私にはその振る舞いが理解できずにいたのですが、その日は突然やってきました。文法の授業で、アメリカ人のBrandiとペアに。問題に答えると、見事正解!難しい問題だったので、「よかったね!」と思ってBrandiの方を見ると、彼女は満面の笑みで手を差し出しています。「こ、これは・・・」と心の中で呟きながら、私は覚悟を決めました。震える手を持ち上げ、加速しながら彼女の手にぶつけると、「パチン!」と小気味よい音が響きます。その時、私は理解したのです。「これ、すっごい気持ちいいじゃん!」その後もハイタッチは続き、授業が終わる頃には、ハイタッチしながら「イエス!」などと口から出るようになっていました。異文化交流とは、嬉しくて、楽しくて、そしてちょっと恥ずかしい、そんなものなのかもしれませんね。

 

●クラスの担任をご紹介下さい。
授業は担任制ではありませんが、実質Communicationという週4回ある授業の先生が担任の役割をします。この授業は、週2回ずつ、2人の先生が担当しています。見事に螺旋を描く巻き毛に、海のように青い目がとっても素敵なClaire先生は、名前の通りとても明るい先生です。ウズベキスタンに1年間の留学経験があり、外国での語学学習の経験があるんだとか。彼女は非常にわかりやすいフランス語を話してくれます。そして、去年からこの学校で学んでいる学生が、「とても厳しくて、それでいてとても艶かしい先生がいる」と噂していたのが、私のもう1人の担任、Isabelle先生です。この先生は噂に恥じなく、とても美しくて、そして漏れなく、とても厳しかったです。特にクラスでやる発表に関しては、導入の仕方、議論の進め方、結論の述べ方など、何から何まで泣き出したくなるほどに厳しい指導が入ります。おかげで、フランス式のプレゼンテーションの仕方はきっちりとマスターできましたが。ところで、先の噂はこう続きます。「普段はとても厳しいが、たまに見せる優しさに、ファンになってしまう学生が一定数いる。」こちらもまたただの噂ではないことは、私が良く知っています。

 

●授業の進め方はどうですか?
授業はCommunication(コミュニケーション全般)、Phonétique(音声学)、Grammaire(文法)、Simulation globale(学生シミュレーション)、Société et pouvoir en France(歴史)、Littérature(文学)、Atelier d'écriture(文学と記述練習)の7種類です。素晴らしい点は、それぞれの授業で担当の先生が違い(いくつか被っているものもありますが)、6人の先生の授業を受けられることです。喋る人によって聞きやすかったり聞きにくかったりするので、様々な人のフランス語を聞けることは、大きなメリットです。授業の進行は、授業によって早く感じたり遅く感じたりしますが、それはおそらく自分の得意・不得意によるのだと思います。辛かったのは、私がこれまでの人生で唯一赤点を獲得したことのある科目、大嫌いな歴史。「惚れずに物事ができるか」とは、とある小説家の言葉ですが、全くその通りで、まるでついていけませんでした。しかし、授業を補うものとして、大学が管理しているインターネットの掲示板があり、先生によってはそこに授業内で利用した資料、あるいは授業内容を補足する資料を掲載してくれます。この授業は親切に全ての資料を掲示板にあげてくれていたので、何とか期末テストは歴史に惚れずとも乗り切れました。もっとも、先生には惚れていたので、かの小説家の言葉はやはり正しい、ということになりましょうか。「愛の力は歴史を超える」とは、とある小説家の言葉・・・ではなく、私がたった今思いつきました。

 

●宿題は出ますか? どのくらいの頻度や量ですか?
宿題は出ます。週12コマの授業で、7、8割方宿題が出ますから、毎週10近くの宿題を抱えることになります。もちろん頻度が多いので、一つ一つの宿題はそれほど多くありません。記事を1ページ分程度読んでくる、文法や音声学の練習問題を10問程度解いてくる、200単語程度の作文をしてくる、といったのが、一つの宿題の平均的なものです。また、グループワークでの課題が週一回程度の頻度であります。授業の前や後に集まって、課題を進めます。ある授業で、2人一組で、モリエールの喜劇の手法を真似て、面白い、笑えるワンシーンを創作するという課題出ました。準備期間が一週間程度あったのですが、ペアの相手が妙な自信家で、担当の先生に会う度に、「私たちが作ってるものは、本当に笑えるから!」「絶対面白いよ!」と言うのには、思わず苦笑いしました。今思えば、その時私が置かれている状況こそが、まるで喜劇のようでした。

 

●具体的な授業内容を2つ選んで教えて下さい。
Communicationは、週4回ある授業です。テーマに応じて基礎的な語彙力の向上を図りながら、読み、書き、聴き、話しの全ての練習をします。前期は旅、文化、環境、労働の四つのテーマを扱いました。この授業でやったことは、直接DELFのテストに役立ちます。特に、DELFの記述と口述試験では、ある程度形式を知っておく必要があるのですが、この授業で教えてくれるフランス式議論構成の方法論は、極めて有用です。Simulation globaleというのは、何とも説明の難しい授業です。この授業では、各々が想像上の人物、カン大学の学生を一人創り出し、その人についての歴史、例えば見た目や趣味、性格、専攻、秘密などを毎週一ページずつ書いていきます。それらの資料を元に、クラス内でそれぞれがその人物を演じ、その全員が所属しているサークルを創り出します。その中で、それぞれの物語が錯綜し、やがて一つの大きな物語になる・・・といった感じでしょうか。

 

●思えば遠くに来たものだ:妖怪ウォッチがやってくる!
日本が好きなフランス人たちが企画してくれたパーティーでの話です。やはり日本好きのフランス人というのは、得てしてマンガやアニメを愛しています。様々なアニメ名が飛び交う中、私は何人かと、噂の妖怪ウォッチの話をしていました。といっても、名前は知っていても、誰もちゃんと見たことがなかったのです。そして、色んなアニメがフランス人たちに知られているが、妖怪ウォッチは未だフランスには浸透していないらしい。そんな話をしていたその時です。「妖怪ウォッチハ、来年ヤッテキマスヨ!」と、どこかから声が。その場にいたフランス人の誰かが発した様でしたが、声の主は特定できませんでした。そのまま結局話は流れてしまいましたが、日本人ですらよく知らないアニメの情報をきっちりと抑えているのは、流石といったところです。それよりも気になったのは、「妖怪がやってくる」というのが一体どういう意味なのかということ。一瞬頭に浮かんだ、カンの美しい街を行進する妖怪たちの群れ…思えば遠くに来たものだ。