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第17期奨学生の留学体験レポート

 

トゥール留学 七蔵司孝子 様

 

本年夏、8月上旬から3週間をToursのInstitut de Touraineで学びました。Toursはのどかな小都市で古い町並みが大切に保存されている古風な佇まいが印象的でした。人目をひく華やかさはありませんが、落ち着いて過ごせる安全な町です。

 

8月は何しろ学生数が多く、国籍も10カ国は越えていたようです。私のクラスは日本人3名とアラブ人が7名、イタリア人1名で、シリア、クエート人と一緒に勉強できたのは一期一会の思い出になりました。日本人は授業中も静かで発言の回数が少ないため目立たずアピール度が低いというのはよく聞きますが、本当にその通りで、他の国の人達は概して主張が強く、先生の授業方針などに対しても言い募るというか、強いクレームを出す事も数回ありました。国ではなく人によるのだと言えばそれまでですが、自分の意見や気持ちをストレートに表現する力は、善し悪しは別として、私と同じレベルの生徒とは思えない「生きるための、戦える外国語」という強烈さを感じました。

 

私達は文法の力は一通り持っていても、実践では聴く力や話す能力がそれ程ではない場合が多く、実際より低いクラスに組み込まれがちです。授業中は間違えても構わないから何でもどんどん発言するという位の太い気持ちが必要だと感じました。クラスでは挙手などは勿論不要で生徒が自由に活発に発言するため、誰が何を言っているか良く分からない程でした。私の場合は、ホームステイによるトラブルがあり、慣れない話合いで最初は動揺したり落ち込んだりしましたが、海外ではいろいろあるのは普通でしょうし、「窮すれば通ず」という言葉のように、どうにかやり過ごせました。ちょうど8月の繁忙期でスタッフがバカンスをとっている最中だった事もあり、学校側の迅速な対応は期待できなかったのですが、それなりに解決策を探すという意味で良い経験になりました。想像とは違う厳しさも不安もありましたが、仕事を休んでの貴重な1か月は忘れがたい思い出になり、今後の自分の人生に新しい道が拓けるような希望を感じます。本当にいろんな意味で収穫があり、このような機会に恵まれ、行って良かったと思っています。

 

Toursでお勧めの観光スポットを一つご紹介します。車で30分~1時間程のロワール渓谷に中世のお城が多く残っていると聞いていましたので、いくつか訪ねてみるつもりでした。現地で初めて知ったのですが、その中に"Clos Lucé"と呼ばれる小さい居城があり、レオナルド・ダ・ビンチが晩年最期の3年間を過ごした邸宅と聞き、興味深く訪れました。この辺りは昔から「フランスの庭」と呼ばれていて、水運、気候、農畜産物などに恵まれた肥沃な土地だったそうです。

 

イタリア人の超天才ダ・ビンチが何故この地を選び没したのか関心がありましたが、晩年にフランソワ1世の保護を受け、最期まで研究や制作に没頭し、夥しい数の発明品や芸術作品を残したようで、500年以上昔のヘリコプターや自動車、戦車などの史上初のデッサンには驚かされました。近年、IBM社がこれらの原案を基に木製の古いモデルを製作、展示しており、これがなかなかの迫力でした。この居城は部屋数はそれ程多くなく、造りも宮殿のような贅沢さはありませんが、ここでダ・ビンチが3年間も生活して没したのだと思うと感慨深いものがありました。それぞれの部屋には彼のフランス語の名言がボードに書かれて飾られていましたが、キッチンの壁に掲げられていた、「健康でいたいのならこの食事療法に従え、食欲なしには食べるな」という言葉が心に残りました。「精神や体液に動かされると思われていた生体の実像が、想像以上に動きに富み捉えどころがないものであった」という記録は、現代にも通じるものがあり、自然の神秘を感じさせるミステリアスな印象があります。

 

これからフランスに旅立つ皆様が、それぞれに様々な経験を積んでたくましく成長される事を期待しています。日本人の学生や20代、30代の人達の海外に出る頻度は減少傾向と聞きますが、機会があればぜひ、外から日本を眺めてみるのも生きた勉強になるのではないでしょうか。これからの自分の生き方を見直すきっかけとなり、私達の未来に僅かでも貢献できたらと夢を膨らませています。