石原茉依様 ルーアン留学
どんなものにも変えがたい大切な経験です
私がフランスへの留学を決めたのは大学3年生の春でした。大学生活も折り返しとなり、時間がある学生のうちにやっておきたいことを考えた時に、留学が思い浮かんだからです。
私のホームステイ先にはマダムと、13歳から22歳までのお子さん3人と、私を含めた3人の留学生がいました。私以外の2人の留学生は、私からしたらもう練習の必要はないのではないかと思えるほど流ちょうに話しており、家の中は賑やかでした。しかし私はというと、初級レベルのフランス語しか話せないので、間違えたり言いたいことがうまく伝わらなかったりするのが怖くて、家ではほとんど会話を聞いているだけでした。それを見かねたマダムが私に、「試す(essayer)」という言葉を教えてくれました。「あなたはフランス語を勉強するためにここに来たんだから、間違えてもいい。とにかく試しなさい。」と。ホストファミリーは(2人の留学生も含め)みんな本当に親切で、つたない私のフランス語を根気よく聞いてくれたし、間違いがあったら直したり、新しい単語を教えてくれたりもしました。
それ以降私は、家でも学校でもよく話すようになって、自分で実感できるほどに、話す力も、文法も、語彙も身につきました。というのも、話そうとすればするほど“こういう時はなんて言うんだろう?”と、自然と単語や文法のことを考えるようになるからです。私は何か話したいことがあると、どう言えば伝わるだろうか、と考えたり、うまく話せなかったことがあると、どう言えばよかったんだろう、と文章を組み立て直したりしていました。話している時はもちろん、1人で歩いている時でさえそんな風に考えるようになっていたので、語学力を伸ばすには実践が1番だと実感しています。
また、現地では会話表現や、フランスの文化についても知ることができました。お店に入る時と出る時にこちらから店員さんに挨拶をしたり、公園や道端で通りすがりの人と立ち話が始まったり、日常のちょっとしたことに文化の違いを感じました。日本で生活していると、通りすがりの人に話しかけられることはめったにないので、はじめは戸惑ったし突然話しかけられて、あまり良い感情を抱いていませんでした。しかし、慣れてくるとこれもまたフランス語の練習、と思いむしろ積極的にいろいろな人と話すようにしていました。
さらに、語学学校では世界中に友達ができました。それぞれ違った文化や背景をもつ人と話すことで、自分とは違ったものの見方を学ぶことができました。そしてなにより、一緒にルーアンの街やパリを観光してたくさん思い出を作ることができ、本当に良かったと思っています。
語彙が増えたり、文法の理解が深まったりしたことはもちろん、言いたいことがうまく言えなくて感じた歯がゆさでさえ、もっと話せるようになりたいという、勉強のモチベーションに繋がりました。また、慣れない環境で慣れない言葉で生活したという体験は、新しい場所や環境に身を置くことに対するハードルを低くしてくれて、自分の世界が広がりました。たった4週間ではありましたが、この留学は私にとってどんなものにも変えがたい、大切な経験です。