学校についての総評価
しっかり勉強に取り組む語学学校として定評があること、またクラスのレベルが上がるにつれて文化や歴史、商業などのフランスに関するより詳しい知識を深められる授業も選択できること、この2点が留学先の学校を選ぶ際にアンジェカトリック大学のプログラムを魅力的に感じた主な理由です。基本的に平日朝から夕方まで毎日学校があり、授業時間の多さとプログラムの質の高さは、短期間での語学力のレベルアップ実現に大きく役立ったと思います。大学付属の語学学校なのでキャンパス内でフランス人学生とコミュニケーションを取る機会があり、そしてリアルなフランス人学生のキャンパスライフや勉強に対する姿勢を間近に見ることができます。授業に関してはメインの言語のクラスに加え、オプションの授業では自分の興味のある分野を選択し受講することができ、もっと知りたいもっと学びたいという意欲が自然と理解力や語学力の向上に繋がったと思います。
先生たちは経験も豊富で、各国の生徒に関して理解があり、生徒から人気がある先生ばかりです。学校では、フランス人の家族や生徒との交流の機会もあり、異文化を発見し馴染んでいけるようなきっかけや環境作りが充実しています。日本を含めた世界各国の学校と提携しており、交換留学生が多いです。日本人がとても少ない学校とは言い切れませんが、現地での生活で日本人との関わり度合いや、日々どの程度日本語を使うのかは自分次第であって、それはたとえどの学校にいても同じことが言えると思います。私にとってここで過ごした学校生活全てが大事な思い出です。
住居についての総評価
実は初め、もっと個人的に自立した生活環境が良いと考えており寮生活には前向きではありませんでしたが、最終的には日仏の方のアドバイスや親との相談を受け寮生活を選びました。結論から言うと寮にして良かったと心から思っています。国も環境も大きく異なる地で、毎日学校も忙しく、ご飯や掃除や洗濯の全てをこなす事は初めの慣れないうちは正直大変なことです。全てのことが初めてで不安もあり慣れない環境での生活の中で、準備や片付けも必要なく決まった時間に食事を取ることができ、一定の人と毎日顔を合わせてコミュニケーションが取ることができた事は、環境に早く順応し落ち着いた生活を手に入れることに大きく役立ったと思っています。そして想像以上に寮での生活は自由で、窮屈に感じたことは本当に一度もありません。規則はありますがどれも最低限のルール程度で、ホームステイではよく指定される門限やシャワーの時間帯に関する規則はまずなく、友達も気軽に寮に呼べるので、共有スペースで集まって食事をすることもできます。寮母さんをはじめ事務の方や料理人の方や掃除の方、土日や夜間寮母さんに代わる責任者の方といった多くの人が寮には関わっていて、困った時に頼って手助けをしてもらったり、何でもない時でも顔を合わせたら一声かけてくれたり、これらは些細なことのようで大きな安心感に繋がっていました。同じ寮に住んでいるフランス人学生との交流がある点もこの寮が気に入っている大きな理由の1つで、長い期間一緒に生活することで自然と仲良くなれました。立地も良く学校からもTGVの駅からも中心街からもアクセスがいいので便利です。
留学全般についての感想
大学生活中に海外で長期生活を経験したいという考えはありましたが、フランス語は大学に入ってから第2言語として始め、入学前はフランスに留学することなど予想もしていませんでした。大学1年生の夏に家族で行ったフランス旅行をきっかけに、フランスでの留学生活を思い描くようになり、大学2年生の夏の1ヶ月間の短期フランス留学を経て、今回の大学3年生からの10ヶ月の長期留学に至りました。留学に来る前にあったのは、様々なことを学んで吸収し視野を広げ、自分自身を見つめ直し、未来に繋げられる何かを得たいという漠然とした考えだけでした。
来たばかりの頃は授業もよく分からず、どうしたら良いのだろうかという不安の気持ちでいっぱいで友人に毎日弱音を吐いていたのを思い出します。それでも秋学期が始まるまでの1ヶ月間、夏期講習を取ったおかげで、環境に慣れて勉強に集中できる状態で新学期を始めることができたと思います。
毎日学校に通いながら楽しい日々を送っていましたが、ふと日本の生活を思い出して少し寂しく感じることや、勉強が思うように上手くいかないこともあって、何のために私は留学に来たのだろうか、果たしてこれは自分に何の為になるのだろうかと考え出して止まらなくなることもありました。周りのクラスメイトはフランス語が大学での専攻であったり、将来の夢にフランス語が直結するからというフランス語学習に明確な目的があったり、それを目の当たりにすると大学では商学部で将来の夢はまだ分からない私にはフランス語を学ぶ目的やフランスにいる理由が分からなくなってしまい、とても悩んだ時期がありました。今思うとその時間があったからこそ自分自身を見つめ直すことになり、将来について時間をかけて考えることにもなりました。フランス人のシンプルだけど美しい生き方、本当の幸せや物事の本質を大事にする考え方、生活に根付く芸術などの文化の豊かさ、フランスで目にした色々なものに惹かれ、それらを誰かから聞いた話や翻訳といった”フィルター”を介さず、直接見て聞いて感じて触れて自分の中に取り込むことができたらどんなに素敵だろう、自分はどうなれるのだろうと留学に来る前に抱いていた期待や希望を思い出しました。私にとって留学では語学を取得することだけが目的ではなく、その地での生活を通じてその国の人の生き方や考え方、文化や歴史を目にすることが何より重要なことなのだと思い、焦らず自分のペースでやっていこうと考えるようになりました。
10ヶ月が経ち留学終了が目前となっている今、私の生活はとても居心地が良くて充実しています。日々の生活で理解できることがだいぶ増えて、仲良くなった人も増えて、初対面のフランス人でも会話するのが怖くなくなり、色んなことに対して感じるハードルが下がったおかげだと思います。そして、日本人としての視点以外のもう1つの新しい視点を得たと思います。同じ環境の中にずっといると、いつの間にか常識という枠の中に思考が閉じ込められてしまいがちですが、その環境が変われば今まで常識だと思っていたことは覆り、全く違った視点や価値観が見えてきます。今まで見えていなかったところに目を向け、必要以上に常識にとらわれなくていいことに気が付くと思考も生き方ももっと自由になれると思います。頭の中だけの理解だけでなく、実際に自らが一度いつもの環境から飛び出し、今までと違った空気に触れられた事はとても意義があったと思います。
そして、本音で語り合えて尊敬する海外の友人ができたことは私にとって大きな財産です。ただの知り合いではなく友人だからこそお互いの国の文化や政治のことも、どう思っているか素直に話し合えて、メディアを通していない同世代のその国で生きるその人の生の声を聞くことができます。その声にいつも私はいろんなことを考えさせられました。友人と将来の話をするのが好きです。予想もしていない答えが返って来ることもあり、刺激になります。最近では将来したいことの考えも出て来て、たとえ少しずつでも前に進んでいくことに今は不安よりも期待を感じています。
特に思い出深い出来事
昔の自分と比較し成長を感じることができた瞬間はいつでも記憶に残る場面です。半年経って新しい学期が始まり、フランスに来たばかりの頃の夏期講習のクラスの先生の授業を再び受ける機会がありました。夏期講習の頃は何を言っているのか本当に分からなくて、あまり笑わない先生だったので怖い印象しか持っていませんでしたが、半年後の自分は先生が言っていることが十分に分かり会話も出来たことはちょっとした感動で、実は真面目な顔をして冗談をたくさん言う面白い先生だったことも分かりました。
また、旅行中の電車やバスのアナウンスが最初は呪文にしか聞こえていなかったのが、ふと気付くと今は理解できるようになっており、そうした瞬間とても嬉しく感じます。
特に思い出深い出来事は、留学中に両親がフランスに会いに旅行に来てくれた時のことです。交通機関のストライキのせいで、観光ツアーの予定に影響が出てしまうトラブルが起きました。どうにかならないかと観光ツアー会社にフランス語で電話をし、事情を説明し交渉して何とか可能な観光プランを組み直してもらうことができました。10ヶ月前の自分では、まずフランス人に電話をすることなどできなかったし、その上、少し営業時間を過ぎていて前日の変更は不可だということを知りながらも、とにかく電話をかけようと思うことができたのは、長期生活を通じてフランスは何事も交渉次第であること、自分の行動次第で結果は大きく変わることがよくあると身に沁みて感じていたからだと思います。
後輩へのアドバイス
フランスに留学したい想いと機会があるのならぜひ一歩踏み出してみてください。理由は何でもいいと思います。留学スタイルの選択肢はたくさんあります。どれが正解で一番というのはなく、自分がしたいことは何なのか、自分がそこで何を得ることができるのか、自分にとってそれがどんな意味を持つのか、それが一番大事だと考えています。
留学を決める際、日仏文化協会の方には親身になって話を聞いてもらいアドバイスをしていただき、私にとって一生の経験となった留学をサポートしてくださいました。この場を借りて、いつでも前向きに背中を押してくれた家族、サポートしてくださいました日仏文化協会の方々、大切な友人、今回の留学の達成に関わってくださった全ての方に感謝の気持ちを伝えさせていただきます。この私の体験記が少しでも留学を目指す方の力となればと願っています。