6期奨学生

石崎様自己紹介

自分がフランス留学を決めた理由は一言では説明しにくいです。もちろん大抵の人がそうであるように語学面での向上もあれば、現地での生活を体験してみたかったこともあります。しかし、それだけでは理由として納まらない何かが、自分の心の中にはありました。

とにかく「外の世界」を見てみたい。そういったものに近い感情が大きく胸の中にあったのだと思います。日本の社会には、大きな通念、枠組み、また決められたレール、というものが強く幅を利かせています。そういったものの枠を外れて、一度外に出てみて、広い視野で物事を見られる様になる事を望んだのでした。自分の意志に素直に、エネルギッシュに、なにより人間らしく生きる。世界にはそうゆう生き方をした魅力的な人たちが沢山いるように感じていました。日本人の機械のようなものとは全く違ったものを感じてみたかったのです。
以下に具体的な動機や、留学生活にて実行したいことを書いていきたいと思います。

1パリという町で生活すること。そもそも自分はフランスの文化・思想に大変深い興味を抱いていました。ポップ的な文化としての映画や写真、また古典美術の域に属する絵画や文学。とりわけ批評と言うものに関心を寄せていたため、大学ではフランス文学科へと進路を決めました。


去年、大学2年の際、ゼミで美術論についての研究を行ったことや、選択授業ではありましたが比較文化論で報道写真家(アンリ・カルティエ・ブレッソンを中心として)に関して勉強したことが今年のフランスへの留学には強い影響を与えていたのだと思います。
実際パリの街に出てみて感じる空気感。住民一人ひとりが自国のかけがえにない文化を守ろうとし、またそれへの愛を惜しみなく保持している点が、自分にとってこの上なく素晴らしいことのように感じました。

自分の東京での大学生活の大部分は音楽活動で占められていました。幼い頃からピアノを始め、母も歌を嗜む人であったため、自分は知らず知らずのうちに音楽へと心を動かされていました。大学生になってからは、ロックを演奏することが多かったですが、クラシックから自分の音楽は始まったため、パリという町はまさに聖地。毎週どこかの教会でリサイタルがあれば、オペラ、ジャズ、またロックやクラブミュージックなど様々なジャンルの音楽が溢れている町です。

家の外へ出てみれば、メトロ、公園、広場、路上、至る所で音楽が聞こえてきます。それはアコースティックギターを使った典型的なストリートライブだったり、また見たことも無い民族楽器をかき鳴らしている人も多く見ることが出来ます。こんなに恵まれた環境があるでしょうか。溢れんばかりの文化に囲まれた生活と言うものを、体で感じてみたかったのです。

2小さな国際社会としてのパリ。
フランスの歴史は複雑で、かつ世界史の中でも多大な存在感を持っています。そうした歴史を経て、今パリの街には小さな国際社会が成立しています。見渡せば純粋なフランス人、アラブ系の人々、また肌の暗いアフリカ系、そして中国を中心とするアジア系の人々が道を歩いています。様々な血が交じり合い、細かくは分類不可能とも言える位の種族が存在しているのです。これと対照的に、日本と言う島国はほとんどの人が日本語以外の言語を扱えず、また日本に住む99パーセントが日本人です。外国人を道端で見かけると目を大きくして見つめる日本とはえらい違いです。グローバル化という言葉をえらく目にする時代だが、まさにパリはグローバル化が極度に都市の中で進んでいる場所なのです。日本の中でしか何かをなせない、また物事を測れない、という事にうんざりしていたため、小さな国際社会の中に身を投じてみようと考えたのは必然でした。


また、歴史を通じて、パリの華やかな芸術文化を支えてきたのは、フランス人だけでなく、多くの外国人たちでした。自分も外国人としてパリに渡り、多くを感じ、そして何かを還元できたらと思いました。多種多様な文化や外見を持つ人々がごった返しているだけじゃなく、多くの芸術領域に関わる人々がパリにはいます。そういった人たちから刺激を受け、自分を豊かにしていけたらと望んでいました。人との出会いを求めると言うこともパリへの留学を決める大きな要素の一つでした。

3還元する。
上記の事柄などを考え、自分は留学を決意しました。日本では得られない経験が出来るはずです。
先ほども述べましたが、今の日本には張り巡らされた社会通念のようなものが存在しています。それが原因で、自分の意志どおりに人生を歩めなかったり、今ひとつ勇気を持てずに決断をしている人も多いです。特に大学生で、留学したいけど踏み切れない、という苦言を述べる人を多く見てきました。そういった人たちに、いかに一旦外に出てみることが大切で刺激的か、ということを伝えられたら本望です。こんな事があるのか、こんな出会いがあるのか、多くの予想していなかった事があるはずです。きっとこういった生の声が、大きな助けになると信じています。

それと同時に、日本とフランス間の問題。つまり文化差、生活スタイルの差、また考え方ももちろん違うはずです。これらは実際相手国に入って暮らしてみなければわかりません。自分が実際に行って感じて、体験したことなどを、奨学生の報告書を通じてみなさんに伝えられることを祈っています。
何か得た人がそれをその他の人々に還元する。今世界で一番必要とされていることではないでしょうか。

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